- Recommended -
ドイツの中では温暖な気候と言われる産地「ファルツ」。栽培面積、生産量共にラインヘッセンに次ぐ規模を誇りますが、そんなファルツにおける巨大協同組合だったベッカーは、品質を重視する方向性に舵を切り、父の反対を押し切って1973年に独立します。そして今では、ドイツを代表するピノ・ノワールの造り手として名を馳せています。
ベッカーといえばシュペートブルグンダーのイメージがあり、フランス領で造られる偉大なクリュ「カマーベルク」など、このエリアを代表するほどの生産者でもありますが、実は白ワインに関しても素晴らしい品質を誇ります。ヴァッハウでの修行から帰った息子フリッツに、彼の父が「何ができるかを試させた」ことで誕生したのが、貝殻石灰岩土壌のグラン・クリュで造られるこの「ムッシェルカルク」。
驚くほどの立体感とボリューム感を兼ね備え、ミネラルの塊感を感じさせつつも、リースリングらしい滑らかさや親しみやすさを共存させる、稀有な個性と存在感を持った世界観なのが印象的です。豊かなエネルギーと充実感故に、フィニッシュにかけてふいに風味がスッと減衰するようにも感じられますが、実際の余韻そのものは長く魅力ある風味が心地よく続きます。飲むたびにグラスがすすむ浸透性と訴求力が見事で、ポテンシャルと親しみやすさを同時に感じるその魅力は、ぜひ一度体験してもらいたいところでもあります。
(2014/10)