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相対的に、高品質なワインがあまり台頭してこない印象のあるラツィオですが、そんな中でもハイ・クオリティなワインを生み出すごとで有名な「ファレスコ」のメルロー100%ワインです。
まさに「イタリアのメルロー!」とでも言うべき享楽的な美味しさが甘美な世界観と表情を遺憾なく発揮してくれます。以前試飲した2005年のような実直さとは完全に異なる指向性で、屈託のないストレートな表情が結果としてありのままの魅力となり伝わってくるので、ある種の結果論としてではありますが、その際立つ魅力は素直に評価したいところです。
抜栓直後はメルローらしい豊満さとハーブ風味がありのままの表情を生み出しています。そこから1時間程度でピークに達し、一切の文句を絶つほどの甘美な表情へと一気に昇華します。翌日に持ち越すとなだらかに落ち着くとともに、甘味がおさまりイタリアらしい酸が表出します(とはいえまったく角の立たない柔らかい表情)。トスカーナを代表するスーパーメルロー系にみられる絶対的ポジションとはひと味違い、はたまた北イタリア系メルローのような背筋の張りとも異なる、独自の享楽的メルロー像を遺憾なく発揮してくれているので、この個性と存在力は大いに評価すべきだと感じます(瞬間的な魅力は本当に素晴らしく、まさに拒絶し難いレベル)。
構成要素としてはやや弱みもあり、点数的な評価としてはやや伸び悩むような印象も確かにありますが、それでもそのことが逆に功を奏している部分も多々あり、結果として今の甘美な表情が生み出されているとも言えます。そのような市場の評価に伴って「市場価格も高騰しない」という現実を考えると、消費者にとっては非常に有り難く、まさに狙い目のヴィンテージと言えるかもしれません。
(2013/02)