- Very Good Quality -
ジェラール・ゴビーのワインは、化学物質をいっさい使用しない完全なビオディナミで造られます。ゴビーといえば「ムンタダ」が有名ですが、この「ヴィエイユ・ヴィーニュ(古木)」はミドルレンジに位置するワインとなっています。
10年近い熟成を経ていますが、それでもまだなお若さや硬さが観られ、渇きや厳しさを持つ強いタンニンが全体を支配している傾向にあるので、その良質さとは裏腹に、かなりワインを飲み慣れている人でなければ向き合うのは難しいかもしれません。
細身ではあるものの、抜栓日はその強固さからくる厳しい表情が主体となっているので、可能であれば抜栓後に時間を与えた方が無難だと思います。正直なところあまり内部バランスは良くないものの、微細で多様性あるハーブ風味が織り込まれ、強い酸やタンニンを主体とした良質な素性が明確に表現されていること、そして各要素の資質がゴビーらしさをしっかり保っているということもあってか、不思議と全体像は思った以上に纏まっている印象を受けます(そもそも外郭そのものには一切ぶれがない)。さらに、翌日に持ち越すと厳しさがかなり緩和され、10年近い熟成期間が感じられる熟れた果実味がたゆたうあたり、古酒好きの人も虜にしそうな要素を既に内包しているとも言えそうです。
オフヴィンテージ(寒かった年)として捉えられる2002年ですが、性格が正反対で暑かった2003年のカルシネールでもそうだったように、ヴィンテージの良し悪しに関してはあまり神経質にならなくていいと思います(ヴィンテージよりも造り手の手腕を重視したい)。タンニンレベルを考慮するとまだまだ長期間熟成させたいところですが、果実味自体はすっかり熟れているので、このあたりの相反する指向性をどう捉えるかによって飲み頃の判断が変わってきそうな印象です。とはいえ、表面上の性質に関係なく、兼ね備えた素性の良さや良質な佇まいはひしひしと感じることが出来るので、ゴビーという造り手を信じてその時流に身を委ねてみる、というのもまた一興かもしれません。
(2011/11)