- Very Good Quality -
1855年の格付けでは、一番下の格付けとなる第五級に位置づけられたランシュ・バージュですが、1980年代以降に行われた大掛かりな改革(主にステンレスタンクの導入)により、その評価は大幅に向上しています。現在ではより上位に格付けされる有名なシャトーと同等の評価、及び価格帯で取引されていることからも、その実力は逆の意味で「格付けに見合っていない」と言えます。
ミレニアムという記念すべき年が非常に優れたヴィンテージとなったボルドーワインですが、ランシュ・バージュに関してもかなり高い市場評価を得ています。ガッシリした体躯でありながらも非常にスマートに纏まり、全体的なバランス感覚及び意思を感じる統率感には優れたものが感じられます。素直にスルスルと飲めてしまう落ち着いた佇まいでありながらも、その根底に秘めたるタンニンのパワーと総量はかなりのものがあるので、今でも飲める反面、その超寿命さも並々ならぬものがありそうです。
スタイルとしてはトラディショナルな傾向にあり、果実味ではなくタンニンそのものを質感を堪能することで楽しめるといった内容になっています。現代的なワインのみに慣れ親しんでいる場合は、その美点を享受できないばかりか過小評価してしまう可能性もありますが、内包するポテンシャルは十分なものがあるので、第一印象だけで判断することなく、じっくりと時間をかけてその本質をしっかりと引出してもらいたいところです。
素直に評価できる「良質なボルドーらしいワイン」という中庸さが美点のひとつですが、表情自体はそれほど複雑ではなく、世間の非常に高い評価が具に感じられるような偉大さは特に持ち合わせていません。そういう意味では、現在の価格帯に見合った内容とは言い難いものがあり、過剰に期待を抱くのも禁物ではありますが、それでも2000年という価格の上昇を抑えるのが難しいヴィンテージであることを考慮すると、現在の市場価格の下限レンジであればまだ許容範囲という印象だったりもします。今後の熟成によって昇華し大きく花開くかどうかは不明ですが、それでも内包するタンニン力をベースに考えると「超寿命系」であることは確かだと思うので、将来に渡って10年〜20年(もしくはそれ以上)置いておきたいという人であれば、選択肢のひとつとして検討する価値はありそうです。
(2011/01)