- Good Quality -
1級格付けの「五大シャトー」に迫る品質を生み出し、2級格付けの中でも筆頭クラスを歩む「スーパー・セカンド」として有名なのが「シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ」です。
1996年は評価の高いヴィンテージであり、ロバート・パーカーを筆頭に各ワイン誌もラス・カーズの1996年には非常に高い評価を与えているので、残念ながらもはや現実的に「飲むためのワイン」ではなくなっている傾向にあります。既に非日常という範疇も超える市場価格になっているので、このヴィンテージのラス・カーズに特別強い思い入れがある人でなければ、特に気にとめる必要はありません。
抜栓後1時間程度はやや閉じ気味ですが、時間をかけてじっくり向き合うことで徐々に開いてくれる傾向にあります。それほど重厚ではないものの、突出する要素のないバランス感と一体感が非常に飲みやすく、タンニンが甘く既に熟れていることもあり、なんら無理なく嗜むことができます。ややあっさりした無難(無表情)な傾向にありますが、よく言えば熟れて纏まりのある世界観ともとれなくないので、一概に良い悪いはいえないのかもしれません。とはいえ、おいそれと手が出せるワインではないだけに、もしかすると多少物議をかもす内容といえるのかも…。
仄かなチョコレート風味、奥まった優しい果実感、ドライな空気感に針葉樹林系の佇まいなどが見て取れますが、各表情が全面に打ち出されるようなことはなく、さらりと流麗な体躯の中に自然にたゆたう印象なので、どちらかというと単体で飲むより、あくまでも料理とともに飲むことでより一層楽しめるワイン、といった印象になっています(低アルコールな口当たりがやや気になる側面も?)。直前に試飲した同年のカロン・セギュールよりも統率がとれ、とてもよく出来たボルドーワインといった印象ですが、パーカーの評価を実感できるような偉大さは持ち合わせておらず、脳裏に情景が広がるような訴求力も特に感じられないのが気になるところです。ボトルの状態は非常に良く、兼ね備えたエネルギーやポテンシャルは十分に解放されていたので、この事実をもとにすると「ボトル差(ややハズレボトル?)」ということになるかもしれませんが、それでも単純に価格と評価に見合っていないだけで、決してガッカリするような内容ではないので(むしろ普通に美味しい)、安心してお薦めできるだけの一定水準はしっかりクリアしてくれているといえそうです(一概に比較は出来ないものの、個人的には同年のクロ・デュ・マルキの方がある意味好印象かも?)。
(2011/01)