- Very Good Quality -
ヴィオニエの畑の広さは6.1エーカーで、植樹は1983年(2.2エーカー)と1989年(3.9エーカー)に行われています。1989年~2008年までの20年間の平均収穫量は2.28トン/エーカー(34.2hl/ha)で、2008年ヴィンテージはフルボトル換算で234ケースが生産されています。
訴求ポイントが恐ろしく絞られており、いたってシンプルといえる一面もありますが、そこに込められたコアエネルギーはかなりのレベルなので、内包するポテンシャルはかなりありそうです。ワインというもの自体、多かれ少なかれ様々な要素や表情を程よいバランスで組み込み構成する傾向にありますが、このヴィオニエは逆に必要最低限の範囲に敢えて絞り、その範囲内で可能な限り高みを目指し追求しているかのような世界観となっているので、ある種ミニマルワイン的なスタンスと言えるかもしれません。そして、そんななか最も印象的なのが非常に高いアルコール度数で、なんとその数値は「15.1%」にまで達し、実際に飲んだ時の印象はデータで認識する以上のものがあります。
質感自体はあくまでもサラリとした落ち着きのあるもので、アルコールに負けないだけの明確な果実の力も感じられますが(豊かな甘味があるので口当たりは良い)、その余韻とともに高アルコール系のピリッとした痺れが訪れ、水に近い流麗さなども相まって、どこか日本酒(冷酒)に近い印象も受けます。表皮がグリーン系のシトラス風味が程よいアクセントになっていることもあり(3日程経つと仄かにライチっぽさも出てくる)、スピリッツ系のショートカクテルといった印象も多分にあるかもしれません。
体躯の持つ厳しさや、果実のエネルギー感など、その総量の多さや独特の特性からして抜栓日だけで判断するのは難しく(1日では開かない)、短時間で試飲を終えた場合は過小評価してしまう可能性が大いにあります。翌日以降に持ち越すことで本来の豊かなエネルギー感が開花し、落ち着いたバランス感、豊満な魅力ある果実の表情など、決してタイトで厳しいだけで終わらない世界観を披露してくれるので、まずは焦らずじっくりと向き合って欲しいところです。ただし、飲み手としても相当の覚悟が必要で、心身ともに見合うだけのエネルギーを消費する傾向にあるので、一日の終わりに食事とともに気軽に楽しむといった飲み方には適してなさそうです。
(2010/04)