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京都を代表する「丹波ワイン」の「ヌーボー(新酒)」ですが、マスカット・ベーリーAで造られる赤に対し、この白は国産デラウェアを使用して造られます。独特なのがそのブレンド方法で、まだ少し青みがかかった状態の酸味のある葡萄と、完熟し糖度が上がった葡萄の両方を意図的に使用し、うまく望むスタイルへと導き出しています。
まさに「未熟系葡萄」と「完熟系葡萄」の風味の良いとこどりといったスタイルで、酸と甘味のバランスが非常に心地良いものとなっています(イメージとは異なりネガティブな要素がほとんどない)。日本という地における葡萄栽培の難しさをうまくアイデアでカバーしているようでもあり、9%という低アルコールならではの飲みやすさや、誰もが楽しめる明快な魅力など、現実的に日々飲むワインとして必要な要素をしっかり兼ね備えてくれています(おまけに安い!)。
バックラベルには「甘口」の箇所に印が入っているものの、一般的に思い描くような低価格系甘口ワインとは異なり、スッキリとしたキレのある酸のおかげで締まりのある統率力が感じられます。「和(京都)」を感じる優しい仕上がりながら、果実にはライチの風味やトロピカルな風情も仄かに感じられるので、モスカート系のワインやコノスルのゲヴュルツトラミネールが好きな人であれば大いに楽しめると思います(食事とのマッチングを意識する場合はシャルドネ系のグラス、各要素の表情をしっかり感じたい場合はリースリング系のグラスがお薦め)。
食前酒としての役割に見事に適合してくれそうな印象ではありますが、ある種、豊かな果実の甘味を主体とした辛口系要素内包ワインともとれるので、ごく一般的な日常における食中酒としても十分活躍してくれると思います。新酒ということで通年を通じて入手できるわけではありませんが(2009年は3万本の限定醸造)、見かけることがあれば是非一度試してみてもらいたいところです。もしかすると、思いがけず新たな発見や驚きがみられるかもしれません。
ちなみに、ラベルに書かれた文字は、子供達の無邪気な遊戯を見て童心をそそられた大人の感慨を詠ったもののようです(詳しくは平安時代末期の歌謡集「梁塵秘抄」を参照)。
(2010/02)