- Good Quality -
少量のみ生産されるカナイオーロ100%のワインですが、スタイルとしては同年のバロッキ・ディ・テスタマッタにやや近いものがあります。より硬派で実直な側面を押し進めたようでもあり、単一品種ならではのある種の潔さが抜栓直後からストレートに伝わります。表層の滑らかさやアタックに感じる瑞々しさなど、今時のワインらしく早くから楽しめる方向でうまく仕上がっていますが、それでも本質的なタンニン力は強固かつ膨大で、その総量はバロッキを上回るほどのものとなっています。
抜栓日の印象は「バロッキの2日目」といった感もありますが、翌日に持ち越すとローレベルに停滞する不思議な重さのあるアルコール感が漂い、3日目になると木の実系の硬質感やよりドライな資質が強くなる傾向にあります。時間とともにかなり厳しい表情が強くなることもあってか、ボトルの最後の方にもなると、アタックに感じる親しみやすさが瞬時にかき消されて強靭な乾きと痺れが口中を襲います。
バロッキ以上に「昇華し開花するかは未知数」といった印象で、その屈強なタンニンレベルをベースに考えるとかなりの長寿命ワインといえるかもしれません(もっとも他の要素は衰えてしまうかもしれませんが…)。生産本数が少なく価格もかなり高価なので、どう考えても一般向けとは言い難いものがありますが、それでも「2003年というヴィンテージに基づいたビービー・グラーツ流のカナイオーロ像」を真摯に受け止めたいという人であれば、それ相応の結果は得られると思うのでそう悪い選択肢ではないと思います。
(2009/11)