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ポマールらしい重厚感もありますが、それよりも全面に打ち出された華やかで麗しい微笑み系の表情が印象的で、そのたおやかさも相まって非常に心地よく飲み進めることが出来ます。
かなりの魅力と美点を持っていますが、際立った浸透美を持つ甘味が果実系ではなく「旨甘味」といった様相を呈していて、純粋な旨味のピークとしては群を抜く程のレベルにあります。各要素の粒度が際立ち、個々における結束力や存在力など、明らかにスタンダードポマールとは別のレベルにあることがハッキリと理解できますが、例のごとく漬物汁風味が根底にあり、表層的な洗練さとは対照的に「田舎っぽさ」や「野暮ったさ」がどことなく感じられるので、こちらも同じように基本スタイルが「万人受け」とは言えない内容になっています。とはいえ、決してネガティブに転ぶようなものではなく、あくまでも「複雑さ」を付加する程度の仄かなものなので、圧倒的な「旨味力」に注視していればそれほど気にはならないかもしれません。
表情に多少の揺らぎはあれど、終始かなりの魅力を披露してくれるので、得られる満足感はかなり高いといえます。それでも、かなり高い価格であることを考えると心境はやや複雑で(現実を忘れる程の陶酔感には至らず)、全体的にまだまだ「発展途上」といった印象があることもあってか、フィリップ・パカレという造り手の今後の歩む道とその進化に期待したいというのが素直な心情かもしれません。
(2009/11)