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まだ初期段階の飲み頃といった感じですが、いたって実直であり、落ち着いた佇まいで終始その風格を漂わせています。特に抜栓日はかなりの堅牢感があり、きっちり組み上がった石室内の玉座で静かに待つ、といった印象があります。兼ね備えた良質さがひしひしと伝わってきますが、グロ・フレール・エ・スールのワインと比較すると、全体を通じてやはり「長男らしい」といった趣があり、そのぶれのない姿勢はやや愚直ですらあります。
しかし、翌日になると表情に興味深い変化が見られます。重い扉の向こうにある表情は、弟にも共通する愛らしい果実の魅力、そして適度に高く伸びる明確で心地よい酸があり、伝統を重んじる表向きの顔とはひと味違った人間味ある愛くるしい表情を見せてくれます。
当初はごく素直に「質実で良質なワイン」といった印象で、このクラス相応の世界観が遺憾なく発揮されてはいるものの、あくまでも「訪問者が来た」といった対応がなされますが、抜栓後時間が経過するとともに「客人」、そして「友人」へと対応が変化し、最終的には当初の印象を覆すような親しさに溢れます。長時間ともにすることで思いがけない表情が多々見られ、ミシェル・グロの人柄を表すかのような落ち着いた雰囲気にすっかり魅了されるので、ブルゴーニュワインの持つ魅力を心から楽しむのにちょうど良い銘柄だと言えそうです。
(2009/02)