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トスカーナを代表する造り手「サン・ジュスト・ア・レンテンナーノ」が造るメルロー100%のスーパーワイン「ラ・リコルマ」。2003年の生産本数は僅かに4,198本。1997年が非常に高い評価を受けた事で一気にブレイクし、その希少性から価格が異常に高騰する傾向にありますが、トスカーナが誇る世界基準のメルローワインという事実を考慮すると、その需要を満たすのは非常に困難な状態だと言えるので、残念ながらある程度の高騰はしかたがないのかもしれません(そういう意味では、今の正規インポーターは非常に良心的な価格で提供しているとも言える)。
やや難しい傾向にあった2003年ですが、驚く事に猛暑的な指向性は感じられず、メルローらしい豊満で官能的な美、トスカーナらしい精緻さや酸、良質な葡萄から生まれる凝縮感と堅牢性、そしてサン・ジュスト・ア・レンテンナーノの血筋が感じられるクリーンな造りなど、伝わってくる情報とその内容が完全に一致し、どこかが突出する事なく絶妙なバランスで世界が構築されています。
分かりやすい美味しさと、本質的な造りに良さを、同時に同じだけ感じる事が出来る希有な存在だと言え、リコルマの持つ本質的なスタイルは多くの人に素直に伝わると思います。特徴ある難しいヴィンテージでありながら、これだけ綺麗に纏められていることに素直に驚きますが(今回の1本は非常に状態が良かった)、それでも群を抜くような偉大な世界観やポテンシャルを持っているわけではないので、純粋な点数評価としては大きな期待はできないかもしれません。そういう意味では、1万円を大きく超えるような価格だと無理して選択する意味はなく、あくまでもペルカルロと同じような価格帯で初めて高く評価される、といった傾向にあるかもしれません(同じ2003年の比較であればリコルマに1票をあげたい)。
ちなみに、現時点でも十分楽しめる程よい飲み頃感があります。抜栓日から質実さが過不足なく伝わり、翌日になるとその全容がストレートに披露されます。長期の熟成を特別必要としないという指向性なので(熟成しないのではなく、させなくても美味しく飲めるという点に注意)、飲み手にとってはある意味有り難いスタイルと言えるかもしれません。
(2008/11)