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1996年に誕生した「アルマヴィーヴァ」は、フランスのバロン・フィリップ(シャトー・ムートン・ロートシルト)と、チリのコンチャ・イ・トロによるジョイントベンチャーワインで、パロン・フィリップとしては、ロバート・モンダヴィと共に造った「オーパス・ワン」以来の合作となります。
2003年ヴィンテージのセパージュは、カベルネ・ソーヴィニヨン73%、カルメネール24%、カベルネ・フラン3%。熟成はフレンチオークの新樽で18ヶ月間行われます。歴代のアルマヴィーヴァの中でも最高の評価を得るヴィンテージではありますが、長期の熟成を必要とするスタイルではないので、今飲んでも遺憾なくその全てを享受することができます。
まさにボルドースタイルのモダンワインといった世界観で、カベルネ・ソーヴィニヨンをベースとした明快な表情が構築されています。良質な造りと明快な美点に加え、誰が飲んでも理解できるような親近感があり、飲み手は座って待っているだけでも、向こうから全てを披露してくれるような至れり尽くせり感があります。こちらの期待通りのものを過不足無く提示してくれるので満足感は非常に高くなりますが、魅力を引き出す為の駆け引きが必要ない点や、逆に期待を超えるような驚きがないことを考慮すると、多くの偉大なワインを飲みなれた人にとってはこの宴がやや「退屈」と感じるかもしれません。
兼ね備えた雰囲気としては「オーパス・ワンのやや遠い親戚」といった佇まいで、兄弟と感じる程の近さはないものの、バロン・フィリップらしい丁寧で実直な仕立て具合と(やや予定調和的ではありますが…)、ナパとはひと味違うプエンテ・アルトとしての個性がうまく融合し、抜栓日から全容が理解できる難易度&敷居の低さも手伝って、近年稀に見るほどの間口の広さを持った、幅広い層にお薦めできるプレミアムワインだと言えます。
翌日に持ち越すと、実は「奥にまだ部屋があります」といった驚きの招きがあり、抜栓日に繰り広げられた明快な表情とは質の異なる落ち着いた雰囲気が漂います(祭の後とはまた異なる雰囲気)。当初の印象とは異なり、今後の熟成によって性質や表情が変化しそうな気配(ポテンシャル)はありますが、どの時点であっても出し惜しみせず全てを出し切ってくれそうなので、ある意味「いつでも好きな時に飲めば良い」とも言えます。ピークを超えるあたりまで、それこそ10年以上熟成させても面白そうなので、懐に余裕がある人はケースで購入し、数年置きに飲んでみるというのもまた一興かもしれません。
(2008/10)