- Good Quality -
1級格付けの「五大シャトー」に迫る品質を生み出し、2級格付けの中でも筆頭クラスを歩む「スーパー・セカンド」として有名なのが「シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ」です。
当主ジャン・ユベール・ドロンの父ミシェルが2000年に亡くなったこともあり、1999年は親子で造った最後のヴィンテージとなります。1999年は特に優れたヴィンテージではありませんが、そんな中でもうまく纏めてキッチリ仕上げてきた印象があり、造りの良さは十分伝わってきます(サン・ジュリアンにおけるこの年のベスト・ワインの1本)。
堅牢感のある骨格が構築され、一定量のタンニンによる渋み、そして苦みも感じられますが、体躯の主要素が滑らかで柔らかさのある資質のため、無理なくスルリと飲めてしまいます。サイズはあまり大きくありませんが、赤系の果実は十二分に熟され、漢方や緑系のハーブ風味との一体感によって程よい表情が繰り広げらるので、全体を通じ兼ね備えられた魅力はそつなく楽しめます。
特筆すべき点はないものの、どこをとってもそれなりに魅せてくれるので、ある意味において「ラス・カーズとしての面目躍如」と言えるかもしれません。しかし、根本的な「訴求力」や「絶対的ポテンシャル」が乏しい傾向にあるので、心に迫りくるような美点や心眼要素の欠如がどうしても気になります。概ね世間の評価に準じた良質なワインということに間違いはありませんが、残念ながら気軽に手が出せる価格帯には位置していないので、ラス・カーズに特別な思い入れがある人でなければ、あまり積極的に選択するヴィンテージではないとも言えます。
(2008/05)