- Good Quality -
セパージュはカベルネ・ソーヴィニヨン85%、シラー15%。熟成はフレンチ・オーク80%、アメリカン・オーク20%で12ヶ月間。プラ・デ・バジェスという比較的新しいDOに属する現代的指向を持つワインで、「セレッシオ」と同じアバダルが手掛けています。ワイン名の「3.9」は厳選されたパーセルを表すもので、立地条件の良さや、カベルネ・ソーヴィニヨンの樹齢の高さなど、よりテロワールを意識したアイテムだとも言えます。
現代的な造りによる恩恵をしっかり体現したかのようなスタイルで、仮に好みの差があったとしても、全容としては難なく「美味しく飲める」仕上がりになっています。ただ、構造体に緩さや脆さが感じられる傾向にあり、ミッドにおけるシンプルな解像感(加えてややフラット)も多少気になるのが残念なところです。
豊かなタンニンとスパイス要素が相まった、小気味よくピッと立つほろ苦さがあり、これら低域における表情は十分なものがありますが、抜栓日は時間とともに軽く抜ける酸や儚い体躯が前面に出る傾向にあり(中高域系)、反面、翌日になると重厚なタンニン力が際立ってよりスパイシーさが増すので(低重心でよりシラーらしいスタイルに変化)、全体を通じ、まだ独自性や己の世界観構築には至っていない印象を受けます。このアイテムの性質を考えると、現状でも十分魅力を発揮できているとは思いますが、個人的にはもう少し指し示す方向性を明確に絞った方がベターな気もします。
セレッシオとの微妙な価格差がまた悩ましいところではありますが、「同じ造り手による異なる趣を持ったワイン」という部分は素直に理解できると思います。様々なアイテムを飲み比べれば、アバダルという造り手をより一歩理解するための手助けになるので、他のアイテムを飲んで気に入ったようであれば、次なる一本として魅力的な選択肢になりそうです。
(2008/04)