- Good Quality -
濃いめの黄金色で、程よくバランスがとれた質実さ、体躯力、酸が感じられ、スッキリとした滑らかさと古木らしい程よい緻密感、そしてミッドの落ち着きある豊かさなど、今飲んで素直に楽しめるだけの要素は十分披露してくれます。ただし、いくつか注意すべき点もあるので手放しでは喜べません。
自然な佇まいを感じる、ある種の自由奔放さが主となっていますが、かなり個性的なスタイルになっていて、丸くライトなグラッパ(蒸留酒系)かと思うような独特の香りや、時間の経過によって水飴、蜜、黄金糖などを彷彿とさせる甘い香りがグラスから立ち上り(口に含むと消える)、不思議な魅力(個性)となってその世界観構築に一役買っています。この独自性を素直に受け入れられる場合は相応の満足感が得られると思いますが、そうでない場合は拒否反応が起こるかもしれません。
さらに、この世界観を存分に引き出すためには「適した大振りなグラス(416/97など)」が必須で、小振りで細身のグラス(416/5など)を使用した場合、ミッドが消え去りシャバついた酸と頼りない余韻が残る傾向にあるので注意が必要です(グラスの中でしっかり時間をかけると多少は緩和)。使用するグラスによってここまで劇的に差が出るのも珍しいと思うので、グラス差による印象比較をメインとした飲み比べ用途というのも意外とアリかもしれません。
ストイックさや初志貫徹的な強さはないものの、ゆるりと独自の道を歩む姿が、どことなくグラヴネルやラディコンの影とだぶります。ハーフボトルだと比較的手頃な価格帯に位置しているので、こういった歩調を良しとする人であれば、一度は試してみる価値ある面白いムルソーだと言えます。
(2008/04)