- Good Quality -
パーカーに「スペインのペトリュス」とまで言わしめたことや、傑出した年とされる2004年なだけに期待は大いに高まります。最もお手軽なクリアンサではありますが、それでもWAの評価は非常に高く、現在は成長段階で飲み頃は2011年以降とのことですが、残念ながら今回の1本の印象は「本当に同じワインなのだろうか?」と疑いたくなる程、まったく異なる表情と世界観になっていました。
前回飲んだ1999年は、コッテリバニラ系の分かりやすい樽仕立てが印象的でしたが、今回はそういった味付けではなく「果実力の引き出し」を重視したような指向性にあり、資質としてはクリアで十二分に魅力が引き出されている傾向にはありますが、いかんせん近年増加傾向にある「独特の甘さ」を持つスタイルなだけに(極端なあざとさはないがアライアと同質)、良くも悪くも「今時の醸造スタイル」なのだと思います。
同スタイルであっても、さすがにペスケラなだけあって程よい良質さを感じるレベルにまで仕上げてきてはいますが、やはり同じ方向性を持つだけあって「抜栓日は人の影響力を感じる甘さが気になる(ないものから作ったような甘さではないが、決して自然な表情とは言えない)」「本質を伺い知るには余分な要素が削ぎ落ちるまで数日待つ必要がある」といった部分は同じであり、そもそもにおいて、体躯がやたら柔らかく「今すぐ飲んでまったく問題なし」という状態なのに驚かされます。
ペスケラがこういった方向性を選択したことにやや驚きを隠せませんが、それでも、「幅広い層の人が今すぐ飲んで素直に美味しく飲める」という方向に舵を切っていることは、早飲み傾向に流れつつある現代においては非常に有り難い方向性ともとれるので、ある意味「失ったものもあれば、逆に得たものもある」ということの現れなのかもしれません。
コアの力など、基礎構成力はいたって現実レベルなので、純粋な点数評価としては決して高い評価が得られるようなタイプではないと言えますが(故に本当に同じワインなのか疑いたくなる…)、好みの差はあれ、表層的な味については美味しく飲めるのは確かなので、後は「この価格帯に納得できるかどうか」が最終的な決め手になると思います。
(2008/03)