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抜栓直後はやや野暮ったい雰囲気があり、指し示す道筋に明確さや意思が感じられないこともあってか、不意に扉を開けたかのような準備不足感が漂います。しかし、時間とともに少しずつ形が整い始め、1時間ほど経過する頃には各ピースが噛み合うようにになるとともに、真のポテンシャルを徐々に披露してくれます。この段階で基礎世界観が披露されますが、そこからさらに30分程度待つことで、心地よい魅力を持った仄かな果実味が表出し始め、陽的な表情や煌めく容姿を感じ取れるようになります。
当初から胡桃を感じる風味が基幹となり、体躯全体に隅々まで行き渡る酸が全体をグッと引き締めます。重心はやや低めで安定感があり、プルミエ・クリュらしい密度感と解像力を存分に感じる良質な造りだと言えます。アタックの重みに対し、フィニッシュはややあっさりしているものの、滋味を感じる心地よさが全体を包み込み、優しくじっくり噛み砕くことで奥底にある枯れ葉、タバコ、ラプサン・スーチョン的な薫香など、仄かでささやかながらもしっかりとした表情を汲み取ることができます。
豊かで多様性のあるスタイルではなく、表層的な味そのものもいたって現実的なので、純粋な評価としては群を抜くようなものではないかもしれません。しかし、しっかりと自らの足で大地を踏みしめていることの良さ、素直に身を委ねたくなるような安心感に満ち、いつまでもその世界に浸っていたくなる心地よい浸透性のおかげで、心に広がる充足感は十分なものだと言えます。
絶対価格で判断すると、かなり高価なのが難点ではありますが、できれば「年に1度は飲んでみたい」と思えるクラスなのは確かなので、余裕がある時であれば良い選択肢になり得ると思います。
(2008/03)