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モンタルチーノの南部の丘に18世紀前半からあるエリアで造られるブルネッロで、1973年にチンザノ伯爵家が購入後、世間の名声を得るに至ったようです。
50hlと75hlのオーク・カスクで3年間熟成し、瓶熟は最低6ヶ月間(合計4年)行われます。ちなみにこの年の生産本数は約18万本。事前にテクニカルな情報を知らなくても、一口飲めばすぐにわかるほど、いたって実直で落ち着いた表情を見せてくれます。ベタに現代的なワイン(所謂濃厚凝縮系)とは対極に位置するかのような姿勢が非常に心地よく、やや多産的な側面を色濃く見せる瞬間もありますが、抜栓後にしっかり時間を与えてやれば、それほどネガティブな要素にはならないと思います。
クオリティは高くとも、果実の熟度ばかりに偏重したスタイルであれば早々に飲み飽きてしまいますが、こういった無理のない佇まいで現実的に造られたワインであれば、決して多大な感動はないものの、ふと心に留まるような懐かしさや優しさを覚えます。
身近な距離感に落ち着いた体躯サイズ、小気味よい酸味と身の丈にあった果実味など、それぞれの要素が適度な粒度でうまくバランスし、まさに多くの人に楽しんでもらえるような気さくさを生み出しています。抜栓日はやや痩せ気味な印象ではありますが、翌日に持ち越すと酸味と果実味に一体感が生まれ、思いがけずキュートな仄甘さを基調としたスタイルに昇華してくれます。
発展的で多様性ある今の時代だからこそ、逆にこういう系統のワインもしっかり評価してあげたいところですが、それ故にブルネッロにおける「値段の高さ」がやや足を引っ張っているように感じます。業界全体における近年の価格上昇傾向を考えると、逆にお買い得感が出てくる可能性もありますが、インパクト勝負のスタイルではないだけに、同価格帯のモダンワインと同列で比較されてしまうと、やや厳しい状況に陥るかもしれません。そういう意味では、焦って周りを見回さず、素直にこのワインの意思を汲み取り尊重してやることが、より高い満足感を得るための秘訣だと言えます。
(2008/02)