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抜栓直後から、繊細ながらも華やかな香りが穏やかに広がります。表立っては目立たないながらも、やるべき時には必ずやりきるといった裏切ることのない質実剛健さを持っているように感じるので、表面上の要素に華やかな部分が少なくとも、満足感はかなり高い1本でした。
当初は黒よりの果実香があり、その後徐々にフランボワーズのような心地よい酸味を持った赤系果実の風味が広がります。当初は酸と果実の要素がかち合った状態であり、魅力はあるものの素直なわかりやすさはあまり持ち合わせていませんでした。それでも完全に融合した時の姿を思い浮かべると、将来的にはある程度期待できると思います。
抜栓後1~2時間程で大きく開き、刻一刻と果実の甘みが増大していきます。全開した時の果実の風味は想像以上のものがあり、あまり華がなかった抜栓時とは大きく印象が異なります。しかしさらに時間を与えると、今度はアルコール感の強い堅牢剛直な酒質が膨らみ、ほかのすべてを包み覆い隠してしまいます。抜栓直後の細い繊細な様子は影を潜め、頑固親父ともとれるような不動感が漂います。全体的に見ると本当の飲み頃はまだ数年先のように感じましたが、飲み頃の範囲に入り始めていることは事実なので、現状でも十二分に楽しむことができます。
グラン・クリュとはいえ、実際には明確な偉大さを持ち合わせていないのもまた事実だとは思いますが、手に入りやすさとコストパフォーマンスを考慮すると、間違いのない安定した資質を発揮してくれるこのワインのお薦め度は、思いのほか高いと言えるのではないでしょうか。
(2003/10)