- Good Quality -
歴史の浅いネゴシアンながら、良質なワインを世に送り出し一躍スターになるという、新しく現代的なスタイルの造り手「ヴァンサン・ジラルダン」のムルソーです。
比較的こぢんまりとしたボディではありますが、確かにムルソー的なナッティでしっかりとした酒質を感じます。とはいえ、時間の経過と共に果実の自然な甘みやミネラリーな側面が色よく表出してくるので、現代的ムルソーと言われるテロワールを意識したスタイルへ、程よく変貌を遂げているる最中なのかもしれません。
このワインの魅力と指向性は使用するグラスによって大きく変化するので、好みにあったスタイルを演出することが可能となっています。個人的には、少し大きめのシャルドネ用グラスが最もクリュの魅力を引き出せるように感じましたが、純粋な味を求めた場合は他にも可能性が残されていると言えるでしょう。表面上の要素はかなりわかりやすく、難易度が低い万人向けとも言えるスタイルでしたが、それでもコアにひっそりと身を潜める安定感はさすがプルミエ・クリュといったところです。99年というヴィンテージのせいか、わかりやすく素直においしいものの、全体的な広がりに欠けフィニッシュも短めです。現段階では味自体に特筆すべき部分はありませんが、向き合い、そして深く掘り下げることで見えてくる訴求力は、一定の評価を得ることができる良質なものとなっています。パーカー評はかなり高いのですが、価格の問題があるので一般的にはお勧めしにくいかもしれません。しかし、個人的には価格に負けないだけのポテンシャルを密かに秘めているのではないかと感じました。
(2003/10)