- Very Good Quality -
ボルドー大学デュブルデュー研究所とのプロジェクトで造り出した、甲州の隠れたポテンシャルを引き出すこれまでにないワインが「きいろ香」。ワインの最大の特徴でもある「きいろの香り」が誕生するきっかけとなった、「上野園」のシングル・ヴィンヤードから造られる特別なきいろ香がこの「キュヴェ・ウエノ」。しかも、通常のキュヴェ・ウエノの熟成はステンレスタンクで約4ヶ月ですが、ワイナリー限定販売となる今回の特別キュヴェは、なんと1年を超える熟成が行われています。
基本的な世界観や立ち振る舞いは通常のキュヴェ・ウエノとほぼ同じですが、相対的に柑橘系の風味は控えめで、その代わりボディの豊かさと複雑さ、そして果実の表情に見られる仄かな妖艶さが印象的です。純粋な熟成期間の違いによる影響もさることながら、本質的なポテンシャルが一段上といった印象を受けるので、もしかすると、より長い熟成に耐えられるだけのポテンシャルを持ったタンクが選ばれているのかもしれません(ヴィンテージ差の可能性もあるので詳細は不明)。
きいろ香としてのワイン像や、甲州としてのワイン像、そのどちらでもない切り口による新たな可能性を感じるスタイルで、甲州らしいサッパリとした軽やかさの中に、鮮烈な酸とミネラル、そして熟成に耐えるポテンシャルを有した複雑さ、これらが独自の個性として成立している印象で、どことなく米(日本酒)のような要素も感じられる不思議な魅力を有しています。かなり興味深い世界観ではありますが、最大の問題は価格と入手の難しさで、上代自体は通常のキュヴェ・ウエノと500円しか変わらないものの、実売価格では1.5倍程の差が見られる事もあるので、純粋なコストパフォーマンスとしてはかなり分が悪い傾向にあります。なので、コストは完全度外視し、純粋にキュヴェ・ウエノが持つ最大のポテンシャルを体感してみたい人向けという、超ニッチ商品と言えるかもしれません(同時比較さえしなければ、通常のキュヴェ・ウエノでも十分なポテンシャルが感じられます)。
(2021/08)