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樹齢80年以上の「カンノナウ(スペインのガルナッチャ、フランスのグルナッシュと同一品種)」を使用し、可能な限り人為的な介入を避け、テロワールをありのまま具現化するという主眼を持って造られるのがこの「テノレス」。単一品種、単一クリュにこだわり、敢えてDOCではなくIGTを名乗るなど、自分たちの一貫した主義を明確にし、ワイン造りを行っています。
一般的な「ワイン」とは根本的に立ち位置が異なるような、別次元に位置する存在感と個性が非常に印象的で、ワインを飲みなれた人や、一定の固定概念が構築されている人にとっては、むしろマイナスのイメージを有する可能性もあるので注意が必要かもしれません。色調はしっかりとしているものの清澄度が高く明るいルビー系で(ボトルの底の方はやや濃いめ多少濁りもあり)、自然な醸造スタイルによって仄かに発泡している傾向にあります。身の詰まった濃縮したチェリー系の甘みを有し、僅かな発泡感も相まって非常に飲みやすい口当たりを生み出していますが、実際には16.5%という尋常ならざるアルコール度数ということもあり、少量でも食道が熱くなるなど、味覚で感じる以上のアルコール由来のパワーが広がります。その奥に眠る迫力ゆえに、抜栓日は少し打ち解けにくい傾向にもありましたが、自然な佇まいがベースにあるので適度な親近感を持っているとも言えます。発泡感が苦手な場合は事前にデキャンタするか、もしくはグラスに移してからしっかりスワリングすればそれほど問題にはならないので、サーヴ関係で工夫することをお勧めします。
抜栓後数日経過させることで、コアの純粋な甘みを主体とした煌びやかさと土着的愛着感がより明快になるので、可能であれば数日かけてその表情や世界観を具に受け取ってもらいたいところではあります。あまり一般向けするような世界観ではありませんが、テノレスの持つ固有の世界観、及び、そこから発せられる光には一定の評価を与えるべきものなので、機会があれば一度は試してみてもらいたいところです。
(2015/03)