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1996、1997、1998と、過去続けて試飲しているキャンティ・クラッシコ「カステッロ・ディ・フォンテルートリ」です。今回試飲した1999年のセパージュは、サンジョヴェーゼ90%、カベルネ・ソーヴィニヨン10%となっています。
先日飲んだ同じヴィンテージの「カステッロ・ディ・ブローリオ」と比較すると、より明確な果実の甘味とそれに合わせたオーキーな樽の風味が印象的です。パワーで押すタイプではなく、少し細身ながらも流麗で洗練された表情を見せる点が共通していますが、これは全体的にみて1999年というヴィンテージが生み出すスタイルだと思います(1999年のイル・カルボナイオーネも同様)。好みの差はあれど、大枠でのカテゴリーやクオリティについてはカステッロ・ディ・ブローリオと同等のポジションに位置していることがわかります。
1997年の圧倒的なポテンシャルが頭から離れないのでやや物足りない感じもありますが、パワーと引き換えにより洗練され独自の気品を兼ね備えたとも言えるので、正当性のある進化と素直に受け取ることも十分可能です。抜栓直後は若干こぢんまりとした印象でしたが、時間とともにカステッロ・ディ・フォンテルートリらしい豊かな甘味が増大し、しっかりとした樽の風味に負けることのない魅力ある表情を見せてくれます。ワイナートの評価(2002年時点)では僅かにカステッロ・ディ・ブローリオに軍配が上がっていましたが、現状ではカステッロ・ディ・フォンテルートリの方がうまく熟成し進化しているように感じます(純粋なクオリティ自体は拮抗しています)。
一般的に1999年のトスカーナは非常に優れたヴィンテージとされており、造り手のマッツェイを見た場合もポッジョ・アッラ・バディオラの出来が頭ひとつ抜けていたので、全般的に比類なきポテンシャルを兼ね備えていると考えるのは妥当です。しかし、スーパー・キャンティ・クラッシコとも言うべきこのレンジのワインは、既に独自の領域を定め確固たる意志を堅持しているので、単に「力強く甘いだけ」という安易な方向には向かっていません。さらに1999年はヴィンテージの特徴をうまく捉えて優雅なスタイルを構築しているので、個人差や環境によっては本来のポテンシャルを存分に引き出せなかったと感じるかもしれません。そういう意味では若干難易度が高い部類に入るかもしれませんが、可能な限り固定概念を捨て、それ単体で成立する固有のワインであるということを改めて認識し、そして自然体で素直に向き合えうことができれば、より良い状態で率直に楽しめると思います。
ちなみにこのワインは、2003年度のガンベロ・ロッソで最高評価となるトレ・ビッキエーリを獲得した、1999年ヴィンテージとしては4本しかないキャンティ・クラッシコのうちの1本となっています。
(2004/02)